氏 名 N S <男> <学 歴> 早稲田大学第一文学部英文科卒業(昭和49年) 同大学大学院文学研究科英文学修士課程終了 同大学院英文学博士課程中退 サイマルアカデミー 通訳者養成コース本科(IS)終了(平成8年) <職 歴> 駿台予備学校で英語科講師を10年間、サイマルアカデミーで通訳科講師を8年間務める 平成8年から平成14年 (株)サイマルインターナショナル 会議通訳 平成11年から現在 (株)GLOVA 会議通訳 <資 格> 昭和47年 英検一級 平成 3年 TOEIC 955点 (p.r.99,9%) 平成 9年 通訳検定一級 |
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国土省・環境省主催 排出ガス規制に関する国際シンポジュウム 同時通訳 財務省主催 アラブ首長国連邦との租税会議 外務省・警察庁主催 東南アジアテロ対策会議 同時通訳 東大主催 国際シンポジュウム アジアの大都市に於ける持続可能な交通政策 同時通訳 ニュージーランド歳入大臣 日本記者クラブ講演 政策大学院大学主催 「遺伝子関連発明の活用に向けて」国際セミナー 逐次・同時通訳 生物多様性国際シンポジュウム 同時通訳 国内大手自動車トラックメーカー 予算テレビ会議 同時通訳 ベルギー製薬メーカー 国内営業会議 同時通訳 統合失調症治療薬セミナー 同時通訳 SAPジャパン主催 「日本版SOX法対応への戦略」セミナー 同時通訳 ディレクトマーケティングセミナー 「地域属性データソフト活用法」 同時通訳 国内大手製薬メーカー ITシステム導入のための定期電話会議 同時通訳 カナダ大使館主催 <画家エミリー・カーの芸術> 同時通訳 ドイツ証券主催 <地方債セミナー> 同時通訳 国内大手生命保険会社 ホールセラー会議 同時通訳 ロック歌手リッチー・コッツェン氏雑誌インタビュー そのほか多数 |
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Q1.通訳の仕事はどのようにして始めたのですか? 中学生になって初めて英語を学校の教科として勉強するようになりに、音声としての英語に魅力を感じました。いつか英語が話せるようになりたいという素直な気持ちがその後も持続しました。大学生の頃、アポロ11号が月面着陸した時に、同時通訳という仕事があることを知り、通訳という仕事に憧れを持ちました。ただし、海外に住みたいという気持ちは、あまりありませんでした。 通訳者になるまで、海外には一度も行ったことがありませんでした。語学の勉強のよいところは、読む・聞く・話す(音読)は寝転んでいてもできるところで、文学かぶれで、怠惰な私にも向いています。 予備校の教師を長年やっていましたが、他の多くの先生と教え方が反対で、人気がありませんでしたので、大手の通訳学校に通い、本科を終了して、通訳者としてやっていきたいので、是非お願いします、と懇願しました。 Q2.通訳(同時通訳)をするきっかけは何だったのですか? 私自身は、逐次(通訳)でも同時(通訳)でもそれほど大きな区別はありません。逆に、逐次通訳のほうがかなり難しいなと感じる場面がよくあります。リテンションといって、発言内容を一時的に記憶し、メモを頼りに正確に訳すスキルは、話されているテーマについての充分な知識と、通訳現場での長年の実践が必要です。優秀な会議通訳者はリテンションの力が非常に高いといわれています。同時通訳でも、正確で判りやすい訳出をするには、この能力は必須です。 大学で文学を専攻し、言語に関わる仕事をしたいと思っていましたが、通訳者になる上で、文学を専攻したことは、直接的には役に立つことはないようです。(却ってマイナスになると言った方がよいかも知れません。) 私は、長年かかって、それを無理やり強引にくっつけました。 Q3.同時通訳の力はどのように身につけたのですか? 先ず、大切なことは一般的な語学力(英語力)をあげることでしょう。そのためには、ネイティブの英語が参考になります。私の場合は、米国のテレビドラマを繰り返し見ました。例えば、「刑事コロンボ」「奥様は魔女」などが中心で、今でも見ています。聞き取れないところはテープを止めて何度も聞きました。 また、いわゆる「情報」が短時間に次から次へと押し寄せて来るニュースを聞くことも大切です。最近ではこちらのほうが主眼となっています。語学的訓練という意味もありますが、同時代の社会で起きている出来事の背景的理解を持つという意味において重要です。TBSの夕刻のニュースやBSで放送されている米国のニュースが個人的には好きで、英語の方を聞いています。 |
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辞書などにはあまり載っていない英語も学べます。また、米国のニュースで最近頻出する”home equity loan”など自分で辞書を調べずとも、通訳者の日本語の訳を聞けば、概ね適訳がわかります。 また、語学習得の最も基本となるのは音読です。自己形成期を英語圏で長年過ごして高い英語力を身につけた方は別として、意味の良くわかった英文を繰り返し音読することは、頭の中から日本語訳を追い出して、英語を英語のまま、音声の流れていく順序で理解する能力を身に付ける基本となると思います。同時通訳の先達 国弘正雄氏が、40年ほど前の著作「英語の話し方」以来一貫して主張されていることです。 ただ、予備校講師の経験から言うと、多くの学習者が、英文の意味を理解するというところで苦労して、日本語に訳せばおしまい、というのがいかにも残念です。(私はこのようなやり方を「ヤクセマスヒロコ」と呼んでいましたが、不人気の原因となったようです。)意味の判ったまさにそこから英語の学習が始まるのですから。 音読が功を奏したか否かの証拠は、かなり長いパラグラフでも、日本語相当部分を誰かに言ってもらえば、正確に英語で再現できるかどうかで判ります。10年ほど前、当時東大先端研教授の野口悠紀雄氏が、国弘氏の著作には触れず、ほぼ同じ方法論を提示しました。 Q4.わかりやすい通訳にするコツとは何でしょうか? やはり、通訳するトピックについて、背景知識を持つということに尽きます。例えば、医薬品業界からの業務の打診や依頼があったとして、あまり実績がないのでとすぐにあきらめず、時には蛮勇を奮って、クライアントから提示された資料を調べたり、それでたりない場合はネットで調べたりして本番に備えることも必要です。 もちろん話し方は、聞きやすくはっきりと誤解がないようにします。内容を知らないと、わかりにくくなりがちです。 英語に訳出する場合は、聴衆にネイティヴがいないか、若しくは少ない場合は、一部の慣用表現の使用は避けた方がいい場合があるかもしれません。例えば、「その件はまだ結論は出ていません。」を”The jury is still out on it.”と訳しても、オーディエンスによっては通じないこともありえます。 Q5.もっとも得意とする通訳は何ですか? これといって得意・不得意という形は作らないでやってきました。(通訳者は、omnivorousであるべきだという身の程知らずの考えからなかなか抜け出せないからかもしれません。)ただ、これまでやってきた回数・経験の多い分野が、敢えて言えば得意になりつつある分野といえるかもしれません。通訳エイジェントのコーディネーターが鋭意努力をして折角獲得してきた、或いは、獲得しようとしている案件を、私を信頼して私に廻してくれているのですか、お断りするのは、MOTTAINAIと考えてやって来ました。 やりやすいという面からいうと、日本語、英語いずれの発言でも、音声面でも論理的にもarticulateで整理されている内容は非常にやりやすいです。 また、逆にやりにくいのは、篠田顕子氏の名言にある通り、かなりの早口・ひどい訛・支離滅裂の3要因の何れかが存在する場合です。3拍子揃う場合もあり、言うまでもなく、うまく訳せません。 Q6.そのような仕事の中で大変なところはどのようなことですか? 特殊なソフトウェアー関連の2日間のセミナーで、事前に膨大な資料が送付され、いざ読んでみると、非常にテクニカルで、技術者向けの内容でした。通訳者になってから初めて、この仕事は自分には通訳できないかもしれないと言う不安が脳裏をぐるぐるよぎるも、一旦お引き受けした手前、お断りことも出来ず、ストレスを殆ど感じない私には珍しく身体不調の症状が表れました。そして、通訳日当日、専門用語に惑わされ過ぎないようにに注意して、テクニカルな発言内容の表層の意味だけでもなんとか伝えようと孤軍奮闘した時のことは、今でも良く覚えています。 また、通訳者は音声が命ですから、音声が良く聞こえない場合は辛いですね。 |
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このような時は、あまりに完璧主義に陥らないで、発言者の最も重要な意図を汲み取るように努力しまう。いわゆる、「木を見て、森を見ず」になってはいけません。間断なく連続する言葉の連なりの中から情報を切り出して、発言者のメッセージに何とか食らいついていかなくてはいけません。 Q7.自宅での仕事の仕方について教えてもらえますか? 通訳者の仕事場は、自宅以外の通訳現場ですが、自宅にいるとき何をしているかで、その通訳者の実力や将来性が半ば決まります。私の場合、海外在住経験は一切ありませんので、プロになっても、やはり、外国語である英語のproficiencyを絶えず高める努力を惜しんではいけないと思っています。 その一環として、衛星BSで放送されている米国のABCニュースは、可能な限り視聴しています。ニュースは情報の伝達が基本ですが、ニュース放送の末尾のところでは、それだけに止まらず、言語の持つもうひとつの重要な機能、ある意味で文学的(時には詩的)機能性の現代的実例を時折見ることできます。短い時間のうちに、言葉のplayfulな使用により、人間の内面や尊厳を的確に表現していて、最近では、英語学習の宝庫であると思いようになりました。私は、DVDにニュースを録画し、ポータブルDVDプレーヤーに持ち歩いています。少し時間が出来たときに外でもイヤフォンを使って聞いています。 それと、数十年間、TBSの夕刻のニュースを英語で可能な限り聞いています。新聞は、KAORI SHOUJI氏と浜矩子氏の記事が掲載されるJAPAN TIMESを購読しています。 英語を聞き、且読み、その意味が良くわかると実感できる分量を絶えず一定以上に保つ事ができれば、特定の通訳案件の為の事前準備と併せて、通訳現場に向かう際の不安感や恐怖心を少しでも軽減する事ができます。 Q8.今後は、どのような仕事を手がけていきたいですか? 最近、一般にも公開されている国際会議の仕事を頂くようになりました。私に信頼を寄せて頂いているコーディネーターとの関係を大事にしながら、更にこちらの仕事を発展させて行きたいと考えています。 また、田舎のおじさんや子供、一般には光の当たらない人々の話す、世間からかき消されそうな、聞き取りにくい言葉を伝えるような報道関係の通訳も、敬愛する同僚たちと一緒にやって行きたいと思います。 Q9.語学の勉強で、気をつけているところはどのようなところですか? またどのようにすれば、上達しますか? 専門家の研究や先行する優秀な通訳者が指摘するように、語学の勉強は、10年間コツコツやるのではなく、短期間(2年くらい)に詰め込んでやるとある時期急激に伸びると言われています。 もし、そのような時期が来ないとしたら、その方法論自体か実践法が間違っていると思って見直したほうがいいと思います。多くの人は学校に通えば上達すると思いがちですが、学校には必ずしも通う必要はないということを実証する優秀な通訳者を私は何人か知っています。 Q9.通訳家を目指す方へのアドバイスをお願いします。 クライアントから通訳者へ通訳の依頼がある場合、クライアントは通訳者に語学力だけでなく、通訳をする分野の知識をも求めている場合が多いと思います。ですから、知識の裏付けのある語学力が必要です。私が言うのもなんですが、自分の得意分野があるかどうかは大切だと思います。ですから、背景の知識に裏打ちされた通訳力を身につけることが必要です。 自分の専門分野を需要が高い分野で決めて、そこからやってみることもひとつのやり方です。そして、ひとつの基礎部分が出来たら次の分野に移っていくというのがいいのではないでしょうか。 私は、そういうやり方をする贅沢に恵まれず、異端として自転車操業を繰り返してきました。 また、情報さえ伝達できればよい、とせず、出来れば、それぞれの言語のintegrityを大切にしたいと思います。 最後に一言。それは、通訳者の仕事に欠かせない通訳コーディネーターの献身的と言っていい努力です。これまで会議通訳として何とか仕事が出来たのは、彼らのお陰といっても過言ではありません。本当の黒子(unsung hero)とは、彼女たちのことではないか。 |